剣舞は戦国時代に武士が刀を使って、合戦の前に気持ちを高める動きをしたことが原型です。剣術や居合など武芸、武道からも大きな影響を受けており、実践的な斬り付けの動きが特徴です。
他の芸能との唯一の違いは武士自身が実際に舞っていたという点です。日本には能楽、歌舞伎、日本舞踊など数多くの舞台芸能がありますが、いずれの芸能も能楽師、歌舞伎役者、舞踊家という芸能を生業としているプロ集団が流祖とされています。しかし、剣舞は武士が嗜みとして心得ていた武芸の一つだったので、明治時代まで流派や家元という考えはありませんでした。
江戸時代後期になると明治維新により武士としての生業を失った多くの人々が、今まで大衆が見ることのなかった剣術の技芸を興行として発足させたのが今日ある舞台芸能としての剣舞になります。明治6年に初めて撃剣興行と銘打って、浅草の舞台上で剣舞を披露したことがきっかけとなり、それまで型の見せ合いだった剣術から舞台芸能に昇華しました。
明治後期になると剣舞師により流派が創られ、家元ごとに振付や動きの特徴をつけ演者の個性を生かした芸能として、徐々に世の中に認知されていきます。その影響は大きく、夏目漱石の「坊ちゃん」にも剣舞を舞う内容が含まれているなど昭和まで人気の芸能として存在感を示していました。
大衆に見せる舞台興行としては150年ですが、その源流となる型の発祥からは700年の歴史がある芸能です。